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僕とタスクの仁義なき戦い
どんな仕事もそうだと思うが、我々のようなデザイン制作に携わる人間もまた、案件のタスク管理は避けては通れない課題である。おそらく、多くのディレクターやマネージャーと名乗る人々が日々あれこれ頭を悩ませながらタスクと格闘していることだろう。僕だってそうだ。
並行して交差するプロジェクトの全体把握。
突如として沸き起こる新しいプロジェクト。
予定調和のように予定変更が起こるスケジュールの数々。
そんなタスクの荒波にさらされながら、それでもなんとか今日まで溺れず生存してこれたのは、ブログカテゴリのテーマでもある「研究」の成果ではないだろうか。なんて話を自慢げに社内で話そうものなら、非難轟々、喧々囂々。「いつも雑に仕事ふってくるやんけ」なんて罵られること請け合いである。だがしかし、ここいらでいっちょ主張しておきたい。色々と考えているんですよと論弁しておきたい。
「僕とタスクの仁義なき戦い」
その苦悩と改善の歴史をまとめておくことにした。
2005年~無難にシステム手帳時代
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社会人になって始めて買った手帳。物持ちはいい方だ。
ぴかぴかの社会人一年生。それまで「ちょっと大人な気分」なんて格好つけて手帳を買うことはあっても、気が向いた時に日記を書く(だいたい2週間で飽きる)程度しかしてこなかった。
作成したスケジュール通りにクライアントからのチェックが戻ってこない。入稿期日?そんなの印刷会社に頼んでなんとかしろって。打ち合わせ日に別の予定入れちゃったから、変更ヨロシクね。
おいおい社会人って適当だな…と当時相当面食らったのを今でもよく覚えている。
「仕事に時間割なんてねえんだよ、甘えんな」という社会の洗礼を浴びたことで、よし、手帳を買おう。と決心したのであった。そうして購入したのが、いわゆるシステム手帳だった。1ヶ月のカレンダーの次に週間カレンダーが続くオーソドックスなものである。
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今となっては懐かしい手書きのアドレス帳に時代を感じる
「これで俺もタスク・マスターだ」などと意気込んだのは初めの数ヶ月間だけだった。1ヶ月カレンダーで「何日の何時に○○○がある」という予定を把握することはできた。同様に、週間カレンダーに案件のタスクを書き込んで把握することもできた。ただ、個人で管理して進行する案件がいくつも並行して進んでいくと、週間カレンダーは文字でびっしりになっていった。色ペンでカテゴリを分けるなど工夫はしたものの、結果、何が書いてあるかわからなくなった。
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文字が汚かった訳ではない
システム手帳では、各案件の予定をざっくり把握することはできても、複数案件のタスク進捗を並列で管理するには壊滅的に向いていなかったのだ。
「使えねえ」
結局、数年間は試行錯誤したと思うが、気がつけばシステム手帳の週間スケジュールは真っ白のままになっていた。その後数年間はシステム手帳で通していたが、いつももやもやしていた。
よかったこと:
大人になったなという感慨
わるかったこと:
複数の案件を俯瞰的に管理できない
2012年~2019年途中 完全勝利と思われたyPad
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実際に使ってみてわかる、考えられた良さ。
そんなタスク管理に悩める僕に救いの手を差し伸べてくれたのが『yPad』だ。デザイナー・イラストレーターとして有名な寄藤文平氏が開発した「パッと開けて、バーッとわかる」手帳とノートを合体したような1冊である。2011年に1冊目が発売され、毎年マイナーチェンジが続けられている。これを近所の本屋で発見した時は衝撃的だった。同時に、デザイン会社で企画屋として働いていた僕はとても悔しく思った。考え方次第で手帳をここまで便利にできることに。成長の半分は嫉妬でできている。
『yPad』のココがすごい
◎ 左ページに2週間の予定とタイムスケジュールが縦軸と横軸で書き込める
◎ 右ページに案件別のガントチャートを記入できて進捗管理が捗る
◎ 左右のページを俯瞰してみると、2週間のタスクの全体像がわかる
◎ スケジュールページと方眼のフリーページが交互にある
使いこむほどボロボロになって愛着が湧くところもにも好感が持てたし、タスクの内容や重要度によって文字の色を変えるなど、工夫することでどんどん自分にとって使いやすくなっていった。フリーページも2週間と連動してアイデアや覚えておきたいことを書き留めるのに重宝した。そんなこんなで、8年間ずっと同じものを使い続けていた。意外と一途なのである。
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すごい
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すごい
スタッフの人数が少し増えてきたころから、このフォーマットを応用して、Googleスプレッドシートで会社のタスク管理表を作成。全社でのプロジェクト全体の進行共有にも役立てるようにした。でっかく出力して壁に貼った。見やすくてとても便利だと気に入っていた。
だがしかし、たったひとつだけ弱点があった。ボールペンで手書きしているので、急な予定変更があった場合は消したり書き足したりしないといけないのだ。結果、システム手帳の時と同様に『yPad』は文字だらけになっていった。それでも、システム手帳よりはずっと見やすいし、壊滅的な欠点だとは感じなかった。ただ、いつも頭の片隅にちょっとしたもやもやはあった。
「仕事に時間割なんてねえんだよ、甘えんな」
社会人レベルは格段に上がっていた。甘えなんて皆無だ。
予定変更上等!急な予定も大歓迎!今日?ぜんぜん調整できますよ!
ついに真のタスク・マスターになる時が来たのだ。いまこそタスクのニューウェーブを乗りこなすんだ。
そうして僕はyPadを捨てた。
よかったこと:
ひとつの案件の細かなタスクを把握できる
よかったこと:
複数の案件を俯瞰的に見ることができる
わるかったこと:
アナログなので急場の予定変更に対応しきれない
2019年途中~2020年中頃 目指せ完全デジタル化
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とどいすと
「書を捨てよ、デジタルの海へ出よう。」
ということで、急な変更に柔軟に対応すべく完全デジタル化に踏み切ることにした。ちょうど紙に張り出していた大判出力のスケジュールに対して「時代遅れはなはだしいぜ」という社内の視線に耐えきれなくなっていた頃でもあった。
プライベートでは活用していたgoogleカレンダーを仕事用に。
社内アカウントをつくって全員で来客や外出の予定を共有。
個人のタスクはアプリ『todoist』を活用しながらGoogleと連動させた。
これで真のタスク・マスターだ。案件ゲットだぜ。なんて嘯いている暇もなく速攻で頓挫した。わざわざアプリを開いてタスクを入力するのが億劫だったのと、次第に「今日のタスクは~ですよ。」「タスク全部できたよ、すごいね!」「ほら、こんなに頑張ったから、あなたにはこのバッジあげる。」なんて毎日連絡をくれる『todoist』が面倒な彼女に思えてきた。
※アプリ自体を否定している訳ではありません。
なんと言っても極め付けは、複数のプロジェクト、そして各タスクの一覧性が皆無だったこと。折角柔軟な予定変更に対応できるようになったのに、全体が見えないのでは意味がない。そもそも、スマホに一覧性なんて求めるのは無理があるのだ。情報を俯瞰して整理しながら見れるのは、やっぱり紙の利点だなと痛感した。
そんなこんなで、僕は早々にデジタルの海から逃げ出した。やっぱり地に足着けていた方が落ち着く人間だと再認識したのだった。
よかったこと:
束の間だが最先端のIT社長っぽい気分になれた
わるかったこと:
デジタルでスケジュールと詳細タスクを全て管理するのは無理がある
そして現在 付箋とデジタルの二刀流
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これだ
そんな数年にわたる苦悩とタスクとの死闘の結果、いまのところ最適だと思う管理方法にたどり着いている。
名付けて「アナログもデジタルも仲良くいきましょ大作戦」だ。
きっかけは僕の好きな雑誌「暮らしの手帳」の元編集長であり文筆家である松浦弥太郎氏の著書に書かれてた内容にある。『はたらくきほん100』だったろうか。どの本だったかはあやふやだけれども。方法はたしか、こんな感じ。
・1日の仕事始めの際にその日にやる内容を小さな紙に書き出す
・1枚の紙に1つのタスクを書くようにする
・書いた紙は机においてある透明のビンに入れる
・ビンから紙を取り出してタスクにとりかかる
・タスクが片付いたら紙を捨てる
・ビンが空になったらその日のタスクはすべて完了
なんせ記憶が曖昧なので、間違っているかもしれない。終わったら捨てる。これが素敵だなと感じたのだ。ということで、現在のタスク管理方法はこんな感じ。
①各プロジェクト進捗やおおまかな流れ → Googleスプレッドシートで管理
②打ち合わせや外出など時間変更が生じるタスク → Googleカレンダーで管理
③こなすべき個人タスク → 3つにカテゴリー分けして付箋でアナログ管理
①と②でタスクの全体像を把握しながら、進捗に合わせて都度変更していく。各プロジェクトの進捗管理には様々なガントチャートやデジタルサービスも検討・試用してみたが、結局やめた。うちの会社はまだまだ少人数だし、プロジェクトのタスク変更があったら話し合いながら柔軟にリスケすればいいだけだ。ガントチャートで詳細な変更を都度するより、その時間を企画やクリエイティブの向上にあてる方がずっと効率的だと思った。
で、キモとなる③「個人タスク管理」の具体的な方法はこうだ。
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3つの付箋をはっただけ
なんてことはない。A4のコピー用紙のすみっこに、3色の付箋を貼り付けるだけだ。シンプルイズベストである。
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青の付箋
付箋①:左上の青色
取り替え頻度:毎日
記入内容:デイリー個人タスク
・本日こなすべきタスクをカテゴリごとに分け、優先順位に並べて記入。
・終わったら赤ペンで線を引いていく。
・全て線を引ければ完了!付箋を剥がせば新しい付箋(次の日分)が出現。
・もし積み残したタスクがあれば新しい付箋にも記入する。
この作業を毎日、仕事を始める前の日課にしている。1日の仕事の流れを再確認できるし、急な対応が発生しても手軽に記入できるのが利点だ。こまかな作業もとりあえず記入することで、抜け漏れ防止にもつながる。
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ピンクの付箋
付箋②:左下のピンク色
取り替え頻度:基本は毎週(大幅変更が生じた時は随時)
記入内容:ウィークリー個人タスク
・1週間のタスクをこなす予定順に上から記入していく。
・週のどこかで対応すべき未確定の予定は付箋の下部にならべて記入。
・終わったら赤ペンで線を引いていく。
・全て線を引ければ完了!付箋を剥がせば新しい付箋(次の週分)が出現。
・もし積み残したタスクがあれば新しい付箋にも記入する。
この作業は毎週末におこなっている。翌週のタスクの全体像をつかみながら、各タスクを何曜日に行うかを振り分けられる。この時点でオーバーフローしていたら、週の始まり時点でリスケ調整もできる。
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きいろの付箋
付箋③:右下の黄色
取り替え頻度:基本は毎週(大幅変更が生じた時は随時)
記入内容:ウィークリー全体タスク
・自分は作業しないがチェックやディレクションを要するタスクを書き出す。
・自分の手は離れたが進捗を気にしておいた方がよいタスクも書き出す。
・業務外の請求書発行など、覚えておくべきタスクもとりあえず書き出す。
この作業も毎週末におこなっている。自分に関係ないこともとりあえず書き出すことで、会社全体の動きや覚えておいた方がよいタスクもとりあえず網羅できるのがメリットだ。
ちなみに、本体?であるコピー用紙の空白の部分には、1週間で生まれたアイデアや、覚えておきたいことを殴り書きにして週末に整理。本体も1週間ごとに新しい紙に変えている。
タスク管理との戦いはこれからも続いていく
時間変更などはデジタルで柔軟に対応できるし、日々の作業タスクも付箋なら気軽に書き直せる。
「アナログもデジタルも仲良くいきましょ大作戦」
これが数年にわたって繰り広げられてきた僕とタスクの仁義なき戦いの、現時点での決着である。いまのところ大きな問題点はなく、おおむね満足もしている。がしかし、まだ戦いは始まったばかりなのかもしれない。
タスク管理が苦手、、、そんな人もあきらめないで。手を変え品を変え楽しみながらやると、意外と自分にしっくり来る方法が見つかるはずです。
この記事を書いた人
- 澤井 裕吾
- 主な仕事は企画と記事を書くこと。お客様の新しいチャレンジを応援するのが大好き。大雑把な性格に見せかけて意外と繊細らしい。わりと読書家。三度の飯も酒も好き。FUNはキャンプと焚き火。たいてい1人でどこにでも行くし、予定変更や空いた時間も無駄なく楽しめる派。どうぞお誘いください。