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「Immersive Museum(イマーシブミュージアム)」
いざ、印象派の世界へ——— Dive in Art!
印象派の名画に会いに出かけよう




「Immersive Museum(イマーシブミュージアム)」

皆さん、美術館はお好きですか?「好きな画家の展覧会はチェックしている」「どちらかと言えば好き。時々訪れる」「小学生以来行っていない」「美術に興味がないから退屈」など、色々なご意見が聞こえてきそうですが、本日は従来とは一線を画した全く新しいミュージアムの形をご紹介したいと思います。

東京・日本橋三井ホールで開催中の「Immersive Museum(イマーシブミュージアム)」。近年演劇やアート、エンターテインメント界で世界的なトレンドとなってる“Immersive=没入感”がポイントの新感覚体験型アートエキシビションです。最新の映像技術と音を駆使することで、従来の館内を巡る「鑑賞型」のスタイルから、一つの空間の中に没入していく「没入型」のスタイルを提供し、来場者に新たな芸術鑑賞の「視点」を与えてくれます。ここで出会うのは、最先端のデジタルアート。新時代のアートコンテンツによる、日本のアート界の新たな幕開けに期待が膨らみます。


会場は、高さ6メートル・広さ700平方メートルの大空間となっていて、フロアにはクッションなども用意され来場者は自由なスタイルでアート空間を楽しむことができます。特別な音響効果&壁面とフロア全てに投影される没入映像を組み合わせて、広大な屋内空間に名画の世界を360度再現しています。

所要時間は、本編30分と撮影タイムや特別映像含めて40分。モネやドガ、ルノワール、モリゾらの名作、およそ70作品が次々と登場します。
そう、日本開催第一弾のテーマは「印象派」。「睡蓮」「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」「踊り子」など美術の教科書でも目にしたことのあるお馴染みの作品が映像化されています。

さぁ、絵画の世界に入り込んで画家たちの「眼」を通して、その物語を体感してみましょう。


いざ、印象派の世界へ——— Dive in Art!

印象派といえば、当時だったアカデミスムが全盛だった西洋美術の世界に風穴をあけ、新しい価値を定義した時代の風雲児たち。19世紀のフランスで絵画の世界に大きな革新をもたらした作品群を、今エキシビションでは【印象・日の出】【印象派展】【印象派の技法】【印象派の画家たち】【絵画の中へ】【モネの連作】【睡蓮】【印象派】という8つのシーンにわけて構成されています。

『印象・日の出』 1872年 油彩 48×63cm マルモッタン・モネ美術館

シーンは、モネの【印象・日の出】からスタートします。眼前に捉えた“印象”をそのまま描いた作品は、当時の批評家たちに酷評されます。ディティールを気にせず、対象を大胆に描き切る手法は当時としては類を見ない試みだったのです。目に焼き付く「印象」を描くため、対象のディティールを描写するのではなく、省略や簡素化を大胆に行いながら「印象」を忠実に再現する印象派。
会場では絵画のモチーフとなっている19世紀フランスのル・アヴール港を、写真資料などを元にCGで再現しているそうです。「印象派」という名称のきっかけとなった作品で、モネの主観を追体験できる気がします。

第一回【印象派展】が開催された「ナダール写真館」を再現したアパルトマン

次のシーンは、夜。ある建物(アパルトマン)に次々と人々が入っていきます。1874年、当時のアカデミスムやサロンであまり評価されていなかった画家たちが集まり、第一回【印象派展】が開催された「ナダール写真館」を再現している模様。そして建物に近づいていき、幕が開くとモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、ドガ、マネなど印象派の絵画がずらりと並びます。それぞれの絵画は実寸大となっており、当時の人々が見たであろう光景を時を超えて鑑賞します。

印象派の特徴といえる細やかな筆致に囲まれた空間

上の写真は、シーン3【印象派の技法】のものです。印象派最大の特徴ともいえる、細かい筆致が書道パフォーマンスのように大胆に壁やフロアにレイアウトされ、あっという間に空間を埋め尽くします。自然界に存在しない「絶対黒」の使用を止め、明度を下げてしまう混色をなるべく避ける。カンヴァスに原色か原色に近い色を隣に置くことで、遠目から見ると理想通りの色として知覚できる「筆触分割」という【技法】を編み出しました。
この技法の確立に繋がったモネの「ラ・グルヌイエール」を題材に鮮やかな絵の具を分割し、スケールを変えてみせることで、制作過程の絵の中に入り込んだような、自分が色彩の一部となり作品を構成する要素になったかのような不思議な感覚に包まれていきます。

シーンは変わり、全8回の印象派展に出品された絵画を中心に画家ごとの個性の違いを体感する【印象派の画家たち】へと進んでいきます。その後、1枚の絵画がクローズアップされ、【絵画の中へ】。額装がフレームアウトし、絵画へどんどんと近づき、画家の網膜が捉えた色彩の中へとダイブします。絵画の中へ進んでいくうちに、色はバラバラに分解され、描かれたモチーフは解体されていきます。二次元の絵画が三次元の点群となり、そこに入っていくにつれ意味が解体され、純然たる「色」に包まれていく。色彩の大海原が会場中に広がります。

そしてシーンはいよいよ終盤へ。【モネの連作】では、時間帯によって移ろう光を捕らえようとしたモネの色彩の変化を再現し、続く【睡蓮】では印象派グループが解体した後も追求し続けた、その技法に再度アプローチしていきます。
光と色だけでなく、風や匂いまで感じさせるような、印象派の一つのゴールともいえる睡蓮の世界に没入します。

最後にエピローグにかえて【印象派】の画家たちの肖像を鑑賞。既存の美術界に立ち向かい、志を共にする仲間やライバルと影響を与え合い支え合うことで生まれた印象派。絵画史に一つの時代を刻んだ彼らの主観を、想いを、それぞれの物語を新しい角度から感孚する体験となりました。

今後、こういったコンテンツがもっと一般に普及し、教育や福祉など日常に取り入れられる日が来たら素敵だなと思います。アートがもっと身近に、より手軽に楽しめる存在になるといいですね!

ミュージアムショップで、お気に入りのポストカードや雑貨をゲットするのも楽しみの一つ。




印象派の名画に会いに出かけよう


いかがでしたか?興味が湧いたら、ぜひ足を運んでみてください。
エキシビションの詳細情報を載せておきますね。


《Immersive Museum (イマーシブ ミュージアム)》

会場:日本橋三井ホール(東京都中央区室町2-2-1、コレド室町1  5F)
会期:2022年7月8日(金)~2022年10月29日(土)
時間:10:00~21:00(20:20 最終入場)
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前」駅直結、東京メトロ「日本橋」駅から徒歩7分、JR「東京」駅 日本橋口から徒歩9分
チケット:大人(18歳以上)2,500円、中学生・高校生・専門学校生・大学生1,500円、小学生以下無料

https://immersive-museum.jp/


《ここでも楽しめる 印象派の絵画》

印象派の絵画を所蔵している美術館や企画展の情報も少しご紹介しておきます。

・アサヒビール大山崎山荘美術館(京都府乙訓郡)
所蔵作品:モネの睡蓮シリーズ

https://www.asahibeer-oyamazaki.com/collection/#cat1

・大原美術館(岡山県倉敷市)
所蔵作品:モネ、ドガの作品

・ポーラ美術館開館20周年記念展「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」

https://www.polamuseum.or.jp/sp/monettorichter/

・山王美術館
ベストコレクション展 2022年9月2日(金)~ 2023年1月30日(月)

https://www.hotelmonterey.co.jp/sannomuseum/exhibition/20220902.html

ぜひ、アートに浸る素敵な時間をお過ごしください。

この記事を書いた人

樋口 由宇
美味しいもの、肌触りのいいもの、かわいい雑貨や服が好物です。最近はおうち時間が増えたので、季節のお花を飾ることも楽しみの一つ。観葉植物も増え、果てはリボベジに挑戦して何度かアボカドの種の水耕栽培をしてみるも、一度も発芽しません。どなたか成功の秘訣を教えてください。