CLIENT : 菊風たおる

伝統産業×最新技術 新タオルブランドのブランディング

STORY

ホテルのタオルを日常に

「僕、タオルにはちょっとこだわりあるねん」「私も。ホテルのタオルってふわふわで気持ちいいわよね」。午前9時、まだ人もまばらな大阪駅直結のホテルラウンジの喫茶コーナー。モーニングが1200円もするので正直あんまり気持ち良くない。「でも、そんなタオルって毎日使うにはちょっと気遅れせーへん?」「確かにね。だったら毎日使える理想のタオル、作りましょうよ!」「それなら僕、泉州タオルの工場知ってるわ。いっぺん一緒に相談に行こうや、理想のタオル」。あ、コーヒーおかわり自由なんだここ。毎日は気遅れするけれど理想的な朝食ではあるなあ。なんてぼんやり考えている間に「いいわね!そうと決まればさっそく」と、鴨料理屋と睡眠コンサルタントが謎の意気投合をしていた。

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130年の歴史を誇る泉州へ

 鴨料理屋を営む上村さんが運転する車に揺られ、高速道路をひた走る。阪神高速湾岸線の二色浜あたりの工場地帯の風景が好きだ。夜になれば常夜灯と航行灯に照らされて、辺り一帯が幻想的な近未来の都市のようになる。社会人2年目だったろうか。残業帰りの混沌とした頭で実家に向かうタクシーの座席からぼんやり眺めた風景。メーターが上がるごとに増えていく無駄金。ノスタルジックで物悲しい気持ちになりながら、睡眠コンサルタントの伊藤さんのタオル愛トークをBGMに寝落ちしそうになっていたところ、気がつけば車はいつの間にか畦道を走り、歴史を感じさせるプレハブ工場の前で停車した。おんぼろじゃん。

 泉佐野市のとあるタオル工場。ここの主である菊弘さん、通称「菊さん」に招かれ事務所に入る。うっすらと埃の積もったえべっさんの福箕がずらりと並んでいる。と、ちょうど宅急便のおっちゃんが集金に来た。「ちょっと待ってや」。そう言いながら菊さんは事務机の足元に置かれた巨大な壺いっぱいの小銭を、じゃらじゃらと掻き出した。

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わがままが過ぎる

 事務所の脇に立つ工場を案内されながら、並んだ機械、タオルの製造工程や泉州タオルの特徴である「後晒し」について解説してもらう。のだけれど、菊さんの頭にふわりと乗っている「綿のほわほわ」が気になって話が入ってこない。見れば工場の天井にも「綿のほわほわ」がびっしりとしている。だめだ、まったく集中できない。

 そんな僕なんてお構いなしに「できるだけパイルが長いのがいい」「そんなん原価高ぅついて売れへんで」「糊いらん。時代は自然派や」「名前は菊風やな。菊さんが起こす新しい風や」なんて話し合っている。

 そんなやりとりと幾度とない試作を経て完成した『菊風たおる』。糸を織る段階から化学物質を使用せず、一般的なタオルの2倍のパイルを使用し、長さや密度もミリ単位まで追求。抗菌・防臭加工を施すことで、部屋干ししてもイヤなニオイが残らない。ついにできてしまった究極のわがままタオル。この熱量をいかに世の中にストレートに伝えられるか。ここからが仕事である。これは、紹介記事の書き甲斐がありそうだ。

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やりすぎないデザイン

 記事を書くのも僕らの大切な仕事のひとつ。昔を思い出してセンチメンタルになっていただけではない。感受性を高めるライターならではの作業ルーティーンなのだ。後晒しではなく、後付けだけど。

 『菊風たおる』完成まので工程は、カメラマンの杉谷さん協力のもと随時撮影を行い、取材を行いながらストーリーを編集。その様子をクラウドファンディングMAKUAKEに掲載して支援を募る手伝いをした。結果、目標金額を165%上回る支援を獲得し、ブランドは好発進。

 平行して実施したのが各種ブランドツールの制作。そのデザインで何より大切にしたのは、菊風たおる同様「やりすぎない」こと。ロゴは上村さんが手書きした文字を加工したものを採用。商品説明のリーフレットも、ざらざら風合いのものに極力少ない情報のみ。パッケージはただのダンボールにシールを貼っただけ。『菊風たおる』の世界観を伝えるべく「飾らないデザイン」であるべきだという考えが根底にあったからだ。

制作物

ロゴ / パッケージ / クラウドファンディング

STAFF COMMENT

健全なる精神は健全なる身体に宿る。ブレないものづくりには、わがままが宿る。知らんけど。

ふんわりやさしい菊風タオル。末長く愛用してもらえると幸いです。

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仕事のご依頼から協業のお誘い、なんでもどうぞ。雑なお悩み相談も、どしどしお待ちしています。

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